藤原氏の始祖である大職冠・鎌足は推古天皇22年8月15日、大和国高市郡大原にある藤原の屋敷で生まれた。
(懐妊霊夢)
藤原氏の始祖である大職冠・内大臣(諱は鎌足)は、天児屋根命の21代目の子孫であり、小徳冠・中臣御食子の第一子である。母は大徳冠・大友久比古卿の娘で大伴夫人という。
鎌足を懐妊した時、大伴夫人は体内から藤の花が生まれ出て、日本にあまねく行き渡る夢を見た。妊娠して12ヶ月で生まれ、泣き声が外に聞こえた。一説によると、その声はとなり村まで聞こえたという。
(鎌足誕生)
推古天皇22年8月15日、大和国高市郡大原にある藤原の屋敷で生まれた。別の説によると常陸國鹿島郡に生まれたとあり、そのため、鹿島の神は藤原家の氏神になったという。ある記録によると、鎌足誕生の際には野獣が鎌を献上したという。
また、母方の祖母が、大伴夫人に「あなたが子を懐妊している月数は、常人とは異なっています。平凡な子と違い、きっと優れた功績をあげることでしょう」と告げた。夫人もそのことを不思議に思っていた。鎌足が生まれた時にはなんの苦しみも伴わず、気づかないうちに安らかに生まれた。
挿絵:時雨七名
文章:くさぶき
「懐妊霊夢・鎌足誕生」登場人物
<中臣鎌足>
大化の改新の中心人物であり、改新後も中大兄皇子(天智天皇)の腹心として活躍、藤原氏繁栄の礎を築いた。
<中臣御食子>
鎌足の父。推古天皇が崩御した際、次期天皇に田村皇子を推挙した。
<大伴夫人>
鎌足の母。智仙娘。
<天児屋根命>
祝詞・出世の神。岩戸隠れの際に祝詞を唱え、天照大神が岩戸を少し開いたとき太玉命とともに鏡を差し出した。